肉を食べて力が湧きますか?VANの石津謙介さんのシチュー
前述のように、長男Mの誕生日を祝う食事――とりわけ誕生日だから外食というわけではなく何か口実を見つけて外食をするのが好きなだけなのだが――がまだだった。当然、長男Mに行く先の決定権は委ねる。何を食べたいのかな、魚好きだし鮨かな、予約取れればいいけど…と考えつつ、訊ねると意外な答えが
「何食べに行きたい?」
「えぇと…。」
何だかもじもじ
「何でもええで。」
「じゃぁ…。」
君ぃ、もしかして何処かで知恵つけられて、すごく高い店とかねだろうとしてるのか?
「焼肉がいいんだけど。」
「じゃぁ○○か。」
「いや、久しぶりに××に行って子袋食べたいんだけど…お父さん痛風でずっと行けなかったから。」
おおっ、すまぬ息子よ、一瞬でも下手な勘繰りをした父を許してくれっ!
どうやら私の体を気遣い、ずっとこの店の名前は出さないように母親と息子達の間で合意が出来ていたらしい。それが最近の私の体調の良さと尿酸値に嫁さんがGOサインを出したようだ。
子供の食べたいものを我慢させていたと思うと本当に情けなく申し訳ない気持ちになるものだ。子袋をずっと食べたいと思っていた中2もどうかとは思うのだが…。
煙濛々と渦巻く店へと出掛けるためTシャツや短パン、ジャージといった今から庭いじりでもするかのような格好に着替えたのは言うまでもない。染みつく煙臭のため、その店の近所の常連さんとの調和を図るために。
チレ刺し、塩タン・ハツ・ミノと進み、タレもんは長径50cmはあろうかという銀盆に乗ったタケノコ、ギアラ、子袋、ヒモ、ウルテ、ネクタイ、ハラミを獰猛な肉食獣のように食べ尽くす息子達。
まだ小さな男の子をお持ちのみなさん、中学生の男の子の食欲は半端じゃありませんよ。
塩タンと書きましたが、実は少し違います。見慣れた丸い塩タンではなく細長いのがお分かりいただけるでしょうか。
タンは上タンといわれるタンの付け根にノドブエ・タンツラ・タン根などと呼ばれる部分があり、更にツラミという頬の肉へとつながっています。
店に納品される時は、これらが一塊りであり、これを縦に細長く切って上タン・タンツラ・ツラミを一枚で食べさせてくれるのです。
このツラミ一体塩タンを食べる度に思い出すことがあります。VANの石津謙介黒>さんの言葉です。私達、いや私達より上の世代にとっては神と呼ばれ少なからぬ影響を受けた人が多いのではないでしょうか。
昨年亡くなられましたが彼が晩年、雑誌上で数ページに渡りタンの付け根、ノドブエを使ってタンシチューを作っている記事を読みました。後にテレビでも同じように自ら作って振る舞い、たくさん召し上がっていました。その時彼が
「肉を喰うと力が湧くだろう。若い人は肉をたくさん食べなさい。元気ない時ほど肉を食べなさい。」
というようなことを仰っていました。その時点で80歳は過ぎていらしたと思います。この世代の人達は戦時中の体の大きなアメリカ人へのコンプレックスもあり、肉への思いは強いのかなと思ったりもしました。
しかし私自身も子供の頃、ご馳走=ステーキみたいなところがありました。ちびまる子ちゃんでもそんな話がありました。それに肉を食べると力が湧くような気がするのも事実です。鮨を食べた後とは明らかに何かが違うような気がします。
そんなことを考えていると肉を食べ終わった息子が一言
「力が湧いてきた〜、帰ってトレーニングしよう。」
と。
世代は関係なく感じるのか、単に血筋なのでしょうか。